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「読書と豊かな人間性」と「児童サービス論」:近くて遠い二つの科目(後半)

聖徳大学の片山ふみです。「「読書と豊かな人間性」と「児童サービス論」:近くて遠い2つの科目(前半)の続きです。2026年3月15日(日)に立教大学で開催された公開シンポジウム「「読書と豊かな人間性」の授業内容と指導法の検討」でのお話の記録、後半です。

  「学校司書のモデルカリキュラム」を考える際の作業部会では、そもそも論になりますが、読書という概念をどう捉えるのかという点においても、議論がありました。つまり、調べるための読書とリテラシーの位置づけについての議論です。

 学校図書館と公共図書館は同じ教育施設だから、「読書と豊かな人間性」と「児童サービス論」は似たように子どもを対象とする科目だからということでは解決できない様々な問題があるのです。

 

 そうした問題を整理すると、ひとつは、「読書と豊かな人間性」と「児童サービス論」の読み替えに関する議論、もうひとつは「読書と豊かな人間性」を学校司書のモデルカリキュラムに位置づけることによって生じる議論に整理することができると思います。

 そしてこの問題は、大学等で指導する身としてもどの立場からものをいうのか、難しくさせています。

 一方で最新の状況では、公共図書館の学校図書館のサポートをより強化していく、という流れにあります。この背景には、学校施設と他の公共施設との複合化の流れなども影響があることでしょう。


 学校図書館と公共図書館の複合化事例というところでいきますと、小学校と公共図書館との複合化により、豊富な資料を授業等で利用することが可能になる、学校と地域が一体となり、子供から大人まで多様な関係のなかで、子供たちの活動、学び、 成長を育むことができる、などのメリットがあると言われています。

 こうした情勢からすると、学校図書館は、公共図書館と連携していく、つまり、一体化していくという傾向ととらえることもできると考えられます。

 このような中で、二つの科目には距離があるという歴然とした事実を受け止めつつ、司書教諭、学校司書、司書は連携していかなければならないという状況にあります。本書がそのことにどのように貢献できるかについて最後に私の考えをお話しさせていただきたいと思います。

 すでにある問題としては、ここまでにお話させていただいたように、指導内容面、対象年齢、読書のとらえ方、読書指導か読書支援課といった点が挙げられます。

 まず、内容面において、本書では「読書と豊かな人間性」という科目の特性を主軸としながら、必要な部分を補うことで「児童サービス論」にも対応できるような構成となっているのではないかと思います。児童サービスの意義や歴史といった部分を除けば、実践や資料、子どもの読書をめぐる考え方、発達段階についての章は、共通して学ぶことのできる内容を網羅できているのではないかと考えられます。

 特に黒沢学先生の発達段階についての心理学的知見は、「児童サービス論」の教科書を含めて考えても、他に類をみない内容で、ぜひ司書のみなさんにも学んでほしい内容だと感じています。

 『読書と豊かな人間性』(中村百合子編, 樹村房, 2026)ではまた、サービス対象という点では、学校図書館の対象とする年齢だけでなく、乳幼児も含めた幅広い言及がみられます。

 読書のとらえ方という点では、中村百合子先生の章で大変整理された形で示されています。読書とは何かという問題は、一般に一つの考え方に定まっているわけではありません。本書では、狭義・広義の読書を示しながらリテラシーとの関係を整理し、学習者やテキストを用いる教員が、自らの立場をどこに置くのかを考えられるように構成されています。そして、その立場の違いが子どもたちの読書の捉え方や支援のあり方にどのような影響を及ぼすのかを考える契機となることも意図されている、つまり、軸足の置き方によって、いわゆる司書教諭的な読書観にも、司書的な読書観にも接続できる構成になっていると感じています。また、先ほど申し上げました通り、両者の考え方は今後さらに近づいていく可能性もありますので、そうした変化にも対応できる書き方になっているのではないかというのが私の読み方です。

 読書指導か読書支援かという点についても、これまで読書指導という枠組みで議論されてきた蓄積を丁寧に整理したうえで、後半の章では、「指導か支援か」という二項対立そのものから少し距離を取り、どのように子どもたちの読書を支えるのかという視点に焦点があるように思います。たとえば私が担当した第8章・第9章は、読み聞かせやストーリーテリングなどのさまざまな手法を紹介する内容ですが、学校での授業での実践のしやすさなどは意識していますが、公共図書館、学校図書館に共通して実践できる部分だろうと思います。

 中山美由紀先生の第10章,第11章、江竜珠緒先生の第12章,第13章は、お二人の学校現場での実践を踏まえた内容のため、学校という場が想定されているものの、児童サービス担当者が学校図書館と連携するにあたって必要な知識となります。公共図書館におけるお話会などの実施は実際のところ小学校低学年までで中学年以降は学校への支援が主体になっていくと現場の方から聞くこともありますので、学童期の子どもたちの様子を把握できるというのは貴重な内容なのではないかと思います。

 このように、本書は結果として、「読書と豊かな人間性」を対象としながら、「児童サービス論」にとっても有用な情報を提供しており、学校図書館と公共図書館の双方の実践を支えるテキストとなっていると思います。

 本書が、司書教諭、学校司書、そして司書がそれぞれの立場から子どもの読書を考え、互いに対話しながら実践をつくっていくための一つの共通基盤として活用されていくのであれば、執筆者の一人としても大変うれしく思います。

 ありがとうございました。

著者
片山ふみ
公開日
更新日

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