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小学生の読書の導き(第10章・第11章)について(前編)

成蹊大学等で非常勤講師をしています中山美由紀です。以下は2026年3月15日に立教大学で行われた公開シンポジム「「読書と豊かな人間性」の授業内容と指導法の検討」における報告に、若干の加筆・修正を行ったものです。

―はじめに―

 今回出版された教科書『読書と豊かな人間性』をお持ちの方は見ていただきながらと思っています。プレゼンを作ってきたのですけれども、ちょっとその流れではうまくいかなくて。黒沢学先生のお話をもっとずっと聞いていきたいなと思いながら、始めます。

 10 章 11 章の小学校の読書の導きというところを担当した中山美由紀です。自己紹介をすると、大学は教育学部の国語教育選修を卒業して、最初に勤めたのが、私立高等学校の専任司書教諭です。その後7 年ブランクがあって、非常勤ですが社会復帰したところが、公立の小中学校の学校司書。その後、国立大学法人の東京学芸大学附属小金井小学校司書をやって、2017 年に退職をしました。兼務で大学の非常勤講師もお声がかかってやってきて 19 年目になりますけれども、立教大学では去年まで「読書と豊かな人間性」を担当させていただいてきました。

 学校図書館に社会復帰した後(2000年くらい)から、アメリカの学校図書館のガイドラインである「インフォメーション・パワー」を学んでおられる方々とお付き合いが始まりまして、その時に中村百合子先生、松田ユリ子さんとも知り合いになっていろいろと勉強させてきていただいたというご縁があります。探究プロセスにおける情報リテラシーの育成が、当時、喫緊の課題だと思っていました。それと、授業活用、授業支援、授業者と学校図書館のコラボレーションですね。私の現場である小学校図書館でもできる限りそれを実践しようとしてきました。今回、自分の実践についてはコラムに書いたのですが、全部)(ページの関係で)ボツになりました。(以下、「コラム」と出てきたらその、幻のコラムのことになります。)

 メインの実践は、今日も来てくださってこちらの端にいらっしゃる、田揚江里先生が東京都狛市立緑野小学校の司書教諭でいらっしゃって、その時の学校司書だった松原礼子さん、それから、もうお亡くなりになってしまった丸山英子さんの実践が学校全体を巻き込んでおり、読書教育については担任がやる、図書館は後方支援をしているというもので、ものすごく衝撃をうけました。10年前の実践ですけれども、すでにその時に先進的な事例だったと思いますので、それを10章、11章で取り上げさせていただきました。

「ひとり読み」 自分で文字を読むことへの移行

 最近思うのは、読み聞かせが全国的に大変盛んではあるのですけれども、それだけが読書推進かっていう話ですね。小学校の低学年でひとり読みへの移行ができていないと、中学年ぐらいで読書嫌いがもう登場し始めてしまうのですよ。

 それは周りの大人が読めるようにしてあげていない。小学校教師が多分、そのことを自覚していないような気がします。黒沢先生のお話の中にあったように文字とか音声とか、それから文字の連なりから言葉があって、その言葉をその子が自分のものにしていくという複雑な過程を、たぶん小学校教育は今まで「音読したらお家の人にさいんをもらってきなさい」とか、書写の時間にじっくり時間をかけながら文字を書くとか、そういう何でもない当たり前のことのから培ってきたのじゃないかなって思います。最近の小学生はタブレットで文字を書くので、字がすごく汚くて整わなくて、書道教室が流行っているというNHKニュースもありました。

 自分の身体と体を使って言葉を獲得していく過程と、それから本の中にある実際には体験してないのだけれども、それが自分の体験かのように自分の中に落とし込まれていく過程があって、今、(黒沢)先生のお話で少し分かったように思うのですけれども、本当に複雑です。でも、それは繰り返し、繰り返しやっていく中で蓄積でできるようになるのです。いくら読み聞かせが盛んでも、その先のひとり読みを大人が仕掛けていかなかったら、子どもは読めるようにならないでしょう。そこを小学校の読書活動、読書指導は大事にしていってほしいと思います。それらが多分、その後の子どもたちの学びや生涯学習者として、世の中のいろんなことに向き合っていく時に、「読む」という行為を通じて、その人が人生を大きく変えていくかもしれないということにもつながる大事な活動になるとしみじみと思っています。

 茨城県では、高校生をアルバイトで積極的に雇うという書店さんがあって、なぜかって聞いたら、「未来の読者」を育てたいからっておっしゃるのですね。本に触れる人、若者を増やしたいからって。その書店は、高校生展示も行っています。今日いらしている勝山万里子さんたちが関わって実現したのですけれども、毎月いろんな県内の高校図書委員会が書店の中で展示をしています。翻って、学校は読書活動、読書指導って言った時に、なんかメインから外してしまっているかのような学校文化になってしまっていて、果たして、それで学びが成立していくのかな?って思います。

 ですので、今回の緑野小の実践を取り上げたのは、まさに、田揚先生が1年生の1学期に「指読み」をですね、子どもが文字を(指さしながら)ちゃんと小声を出して読んでいくっていうところから始めて、しかも子どもが図書館にやってきて選ぶ本を、小学校1年生の教科書の語彙数に合わせた本を机の上に用意して、その中から選ばせるという子どもの自発的な活動も取り入れてやっておられました。その子どもたちにあった資料をちゃんとそこに用意しているという丁寧な図書館の活動をしていらしゃることが、私にとっては(司書教諭と学校司書の協働という意味でも)大変衝撃だったです。それは、元は、松江市立揖屋小学校、島根県のですね、そこでされていたのを参考にしたと田揚先生はいくつもの文献にも書かれています。

 揖屋小の「この指は魔法の指だよ」って(司書教諭が)指に目を描いて、「この目が文字を読んでいくよ」という実践「ヨミール」について初めて直接聞いた時も、私には(「そこまでしないといけないのか」と)衝撃でした。〈東の緑野小・西の揖屋小〉というのが小学校図書館活動として私には二大実践でした。その二校は共に山形県の鶴岡市立朝暘第一小学校(2015年学校図書館大賞受賞)の実践に学んでいらしたので、その朝暘第一小学校も含めて、三大小学校図書館実践かなと思っています。それを超えるものには、今のところまだ出会っていないので、10年前ですけれども、緑野小の実践を取り上げさせていただきました。

―「学校図書館教育全体計画」と年間スケジュールの読み取り―

 当時の「学校図書館教育全体計画」が149ページにあって、ここに吹き出しで書いたポイントがあります。学年の目当てもあります。連続した読書時間を確保するということで、時間割の中に「図書の時間」、緑野小は「図書館の時間」ですね、を作っておられます。

 環境が整った先に、継続的な連続した時間を確保することが、小学校ではすごく大事だろうって思います。よく小学校は「図書の時間」があっていいよねと言われますが、特に学習指導要領に規定はありません。国語や学級活動の時間、あるいは総合的な学習の時間を読み替えて、その学校の裁量で生み出している時間なんですね。その地域の文化や学校文化として「図書の時間」、「読書の時間」があるということになので、そういうものがない学校もあるわけです。

 ただ、今の学習指導要領の低学年は1/3から1/4は国語の時間が占めていますので、図書館の時間として読む時間を確保することは、やりやすいはずです。全国の学校が取り入れていただけるといいなと思っています。

 150、151ページの年間計画の中には、もう全てが込められているなって私は思っています。毎年学生に特にテキストは決めないで資料を配布しながら、「読書と豊かな人間性」は、教えていましたが(この資料はずっと使ってきました)。これも吹き出しを作っとけばよかったなと、実は反省をしています。この中には、「緑野文庫」、「緑野文庫」とやたら書いてありますが、それは学年別に選定した課題図書リストです。各学年33冊から36冊の課題図書を、子どもたちにいろんな手を使ってですね、ここがなかなか他の学校できないんですけれども、読み聞かせはもちろんのこと、いろんな読書や読解の活動の中に落とし込んで、あの手この手で子どもの生活の中に沁みとおるように展開しています。

 注目するひとつは6月の一番上なのですけれども、「読み聞かせバザール」とあります。これは、全校の先生方が子どもたちに読み聞かせをします。子どもは好きな先生のところに行って聞くのです。これが2学期になると、小学校5、6年生が、今度は1、2年生、3、4年生に読み聞かせをするという「全校読み聞かせ集会」になるんですね。だから、6月に全員の教師が示したお手本を、5、6年生は、それをモデルとして二学期に、今度は自分たちがという風に仕組まれています。そのほか、毎年学生と読み解きながらだんだん見えてきたというのが私の実情ですが、それで、今回、この表も掲載せていただいています。

 もうひとつ注目するべき点は、6月の読書週間は、物語ですね。10月は知識の本・ノンフィクション読書になっているのですよ。ですので、ジャンルの大枠を学校の方で決めて子どもたちにいろんなものを読ませようと仕組んでいらっしゃる。しかも、1、2 年生、 3、4 年生、 5、6 年生でそれぞれ目当てが違うんです。

 6月で言えば、「お気に入りの本」を見つけようでから始まり、 3、4年生になると「お気に入りのシリーズ」を見つけようで、 5、6年生になると「お気に入りの作家」を見つけよう。もちろん個々の子どもたちの発達、早熟な子もいれば遅れている子もいますけれども、学校全体として、(学年の)目当てを作って、読書の階段を登っていくことができるように仕組んでいます。

 ノンフィクションの 10 月の方ですけれども、1、2年生「科学の本を読んで、へぇーと思ったことを書こう」で始まります。科学絵本が中心になるかと思いますが、3、4年生は福音館書店の「『たくさんのふしぎ』を読んで、へぇーと思ったことを書こう」って、ランクを上げていくわけですね。5、6年生はノンフィクションを読もうとなっています。

(続く)

著者
中山美由紀
公開日
更新日

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