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小学生の読書の導き(第10章・第11章)について(後編)

成蹊大学等で非常勤講師をしています中山美由紀です。以下は2026年3月15日に立教大学で行われた公開シンポジム「「読書と豊かな人間性」の授業内容と指導法の検討」における報告に、若干の加筆・修正を行ったものです。前編はこちらにあります。

―子どもにさまざまなジャンルを意識させる―

 私のこの本での読書の導きは、「物語を読む」それから「ノンフィクションの中のストーリーのあるもの、あるいは論理が流れているものを読む」、それから、「一部参照読みでいいという読書」と、三つタイプにして説明をしています。それは、ストーリーを追っていくことができるっていうのがいかに高度なことかと、小学校の 1年生から 6年生までの成長を見て感じていました。子どもは、自由、フリーにしてしまうと、文字数の少ない、短時間でちょっとの情報しか入ってこないような本を見て終わりにしてしまう安易な方向に流れてしまいがちです。それは、田揚先生も言っておられるんですけれども、そこでいろんな手を使ってですね、例えば、2 学期のノンフィクションの本を読むにあたっては、ちゃんと読解のワークシートを使って、課題読書の中の本の読み取りができるようにしてあげるような展開もされているんですね。ほんとに丁寧に、子どもたちの読書生活を向上させていくための努力が司書教諭、学校司書の方と、学年の先生たちが、〈みんなで〉やっていくっていうところに魅力を感じていました。

―教員が推進の担い手となる―

 担任の皆さんが自分事として〈子どもに本を手渡す・本の話ができる〉そういうこともちゃんと仕組まれ、緑野文庫の課題図書を読んだ子に対してクイズを出して答えてもらうとか、子どもが返却した時にちょっとした会話もしています。主人公がどうだったかとか、どこが 1番気に入った場面かとか、そういう会話2、3なんですけれども交わしていきます。

 司書教諭としては「図書館の時間」にその課題図書の丁寧な読書活動(アニマシオンなど)もいれて担任と司書教諭と学校司書の三者ですすめていきます。緑野小の子どもに本当に読む力をつけさせてあげようという願いのもとに、彼らが確実に読んでいけるようにしている…そんな姿を時々見学し、拝見させていただいてきました。

 先の年間指導計画表についてもうひとつ言わせていただくと、ここには 1 年生から 6 年生までの、 6 年間の学びの跡も読み取ることができます。6 年生は、 5 年生にブックトークを二学期にするようになっています。つまり、最高学年として、読書生活のリーダーとしてのバトンをそこで 5 年生に手渡すことをしているのですが、その準備がもう 8 月から始まっているんですね。 5 年生、 6 年生の「読み聞かせバザール」での準備も、もう 8 月から始まっていて、もちろん担任は分かっていて準備をしています。

 そして 3 学期になると、今度は6年の担任だけではなく先生方全員から「卒業する君たちへ」という、おすすめのブックリストをつくり、6年生はそれを 3学期読んで、次の中学校の読書生活に入っていく。そういう〈卒業のはなむけ〉として(読書のすすめをして)送り出しをしています。

 こんなところが、学生たちと何年もこの一覧表を読んできた私の見取りです。詳しいことをお聞きしたい方は、田揚先生もこの場にいらっしゃいますので、また後で聞いていただければと思います。

―筆者の実践:読書指導と共に育む情報リテラシー―

 私の実践としては「図書(館)の時間」はあったので、子どもたちは毎週 1 回は(学校図書館に)来てくれました。最近は 5、6 年生が時間割の関係でなかなか来られなくなったみたいですけれども、(当時は忙しくても)必ず図書館に来て、本を返して借りるという時間だけでも実施されていました。その「図書(館)の時間」の最初の 10 分、 15 分でできることをなるべくたくさんやってきたのが、私の実践です。それがコラムに入っていました。学校図書館活用データベースの方にも(おおかたの元情報は)載っていますので、後で QR コードもつけて、皆さんにもお知らせしたいと思います1)。読んで作品を創る、『たくさんのふしぎ』を読んでポスターにする。それは今日もいらっしゃっている、私の後任で立教の非常勤講師をやってくださっている徐奈美さんの実践から教えていただいたものです。伝記は、松田ユリ子さんがお示しくださった「ライブラリーナビ」で、その人物紹介を2冊以上読んで表現してみることにしました。読んだら必ずアウトプットをするっていうことを中心にやってきました。

ーコレクションー

 あとコレクション的にはですね。やっぱり、ノンフィクションがすごく弱いです。それから海外文学も弱いです。小学校は。教師も手軽に読めてしまう絵本はいっぱい買うんですけれども、絵本からひとり読みに移行する幼年文学は薄いです。海外文学は、自分の国の文化だけや社会的背景だけではなくて、その国の社会的背景とか、いろんな価値観の違いなんかが分かりますので、小学生のうちから読んでいけばいいのに、なかなか読まない。どうも、日本の社会は「読書」というと、「日本の小説を読む」という風に傾きがちなので、そこを私は小学校の図書館を預かるものとして、注意しながら、海外文学を増やし、ノンフィクションを増やし、そして、授業支援ができるようにとやってきました。

 が、いかんせん、初めの 15 分だけが勝負でやっていましたので、読書活動の中に「引用」であるとか、「奥付けを読む」であるとか、『たくさんのふしぎ』ポスターだったら、筆者の言っているこの本の不思議を見つけて、そこを抜き書きしてみよう―それが「引用」って言うんだよっていうような、読書と情報リテラシーを掛け合わせるような活動してきたんです。が、いかんせん 15 分しかないので(学校全体の)体系立ったことはにはならないで、私の実践は終わりました。

[中村先生:ちょっと待って、 15 分ってなんで 15 分なの?]

 「図書(館)の時間」って、子どもの自由読書の時間を確保するのが主なので、私の前の方は、もう、本当に貸して借りるしかやってなかったんです。

 それだけではつまらないので、せっかく選んだ海外作品とか、ノンフィクションとか、すごく素敵な虫とかの、虫嫌いという子もいるんですけれども、伝記絵本とか、ほかにも「これ見て!干し柿ってこんなにオレンジに輝くんだよ。きれいでしょ?」って見せたくて、「先生、最初の 10 分、 15 分いただいてもいいですか?」って(担任と)交渉しました。「毎週できれば私にもお話しさせてください」と時間を確保して、そこに(読書啓発も)情報リテラシー指導も入れ込んだっていう感じなんですね。

 なので、学校全体をあげて、体系的に全教員を巻き込み、全クラスを巻き込み、 1 年生から 6 年生までの成長を見込んだ、田揚先生たちの緑野小学校の実践はすごいなと思ったわけです。本当に西の揖屋小と、その大元を作ってくださった鶴岡市立朝暘第一小学校の実践とともに、私は小学校の実践を学んできたということはお話ししておこうと思いました。

―新聞の比較読み他を学んだ工藤実践―

 いろいろ乱れて準備ができなかったのは、実は私が最初に勤めた時の成城学園高等学校の国語科主任だった工藤信彦先生2)の訃報を昨日の朝、受け取ったからです。彼は毎朝、駅で全国紙全部の新聞を買ってきて、それを職員室で切り貼り、添え書きがしながら、(プリントをつくり)全部を比較して読ませるという実践をやっていました。そのプリントをいつも、おこぼれで頂戴していたんですね。彼の文法もすごく面白かったし、近代詩の特講なんかも、実は外部の高校生だった時に縁があって受講したことが、私が成城学園に勤めるきっかけになったんですけれども、彼の導きで国語教育と読書と図書館という道に私は入っていったんだなっていうのを思い出します。すいません。昨日は何も手がつかなく、今日迎えてしまいました。いろんな皆さんに育てていただきました。若手を起用したという中村先生の今回のご本ですけれど、平均年齢を上げているのは私ですが、書く機会をいただいて大変感謝しております。ありがとうございました。多くの皆さんに未来の読み手を育てるという意識で、特に小学校の先生、頑張っていただけたらなと思っています。以上です。


1) 「図書(館)の時間」での実践

2) 工藤信彦先生の主著として、『書く力をつけよう』岩波書店,1983(岩波ジュニア新書);『職業としての国語教育:方法論的視点から』石風社,2019。
 工藤先生は、上掲『職業としての国語教育』に、「学校教育は、大学も含めて、本を一冊として読む手立てを、方法として教えていません。「国語教科書」は、高等学校以下ではほとんどが短文のアンソロジーです。大学教育では、全て読めているものとして講義をしています。このことは、読書指導の点でも心してほしいことです。」(p. 27)と書いていた。

 2026年3月14日、工藤先生と同日に被団協の森重昭氏がなくなった。被爆者でありながらも原爆投下当時広島にいた米軍兵士12人の調査をし、2016年5月27日の前米国大統領オバマ氏の広島訪問時に、オバマ氏がハグした方である。翌朝の2016年5月28日の新聞の1面読み比べを、私は大学でも小学校でも行った。これは工藤先生から教わった新聞リテラシーからうまれた実践であり、それもコラムにすべき実践だったと思う。

著者
中山美由紀
公開日
更新日

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