立教大学の中村です。今回は、本学司書課程履修生の茂木杏樹さん、森木花歩さん(ともに文学部文学科日本文学専修)から、図書館探訪記を寄せてもらいました。
2025年6月26日、那須塩原市立図書館みるるを訪問、見学をした。初夏の快晴の日であり、図書館に入館するとすぐに大きな窓による自然光のぬくもりと、巨大な文字の展示と天井まで伸びた本棚に圧倒された。私たちは、普段から公共図書館の運営や今度の展望について問題意識を持っており、今回訪問する運びとなった。図書館職員2名の方から直接お話をお聞きすることもできたため、本レポートにおいて実際に訪問した内容や考察について報告する。

図書館の様子について
那須塩原市立図書館みるるは、JR黒磯駅の目の前に構えており、外観や内装は木材を基調とした温かみのある建物であり、2階に分かれている。1階は、目を見張る天井までの本棚がそびえたっており、本棚には配架されている本に関連した言葉を巨大な文字にして展示を行っている。BGMが流れ、カフェも併設され、訪問した時間が夕方であったこともあってか、多くの高校生がおしゃべりをしていた。本棚は、基本的に詰めずにかなりゆとりをとっており、全体的にゆったりとした空気や雰囲気が流れている空間であった。


2階はワーキングや勉強を集中して行うことのできる場所として、1階と区別され洗練された雰囲気であった。まるで家のリビングのような空間作りによって、利用者は多い。また、新幹線コーナーと名付けられた場所では、窓から新幹線を眺めることができた。
全体的な様子としては、とにかく学生が多く滞在していたことに驚かされた。隣接した学校があるわけではないが、地域の居場所として確かに機能している。職員の方によると期末前だからということもあったが、1階の飲食スペースでお弁当を食べながらおしゃべりをする学生、グループ学習をする学生、2階で集中して勉強する学生など、それぞれの環境を活用しながら利用している姿が見受けられた。それは、公園のような開かれた図書館として運営がなされているからだろう。どのような運営や工夫があるかについて次項以降で述べていく。

運営について
職員は株式会社図書館流通センター(TRC)で30人ほど勤務している。一般書担当(分類ごと)と児童書担当に分かれており、大体の職員は兼任している。図書館業務にかかるボランティア等はおらず、職員のみの運営となっている。
● 展示
1階の大きな展示が料理・子育て・郷土資料などトピックごとに分類を跨いでなされている。展示スペースは大きなものがいくつかあり、職員でテーマを出し合って決めている。期間は1年(言葉の彫刻:幅允孝)や半年(児童書螺旋階段)、3ヶ月(総合カウンター前・仕事スペース付近)2階の小さい展示(バース作家など)に関してもそれぞれ異なるが、異なっているからこそ飽きない工夫となっている。那須塩原や栃木県にゆかりのある大学生〜故人までの画家さんが対象の展示も行っており、展示の仕方や関連図書に関して作家さんと親密にやり取りして決めている。

展示に関連してイベントについては、朗読、演奏(電子ピアノのコンサート)、映画(ノーマル・活動映画弁士)、ワークショップ、市内美術部の作品展示や埼玉読書コンシェルジュのおすすめ本展示を行っているそうである。以上のことからも分かる通り、7類の芸術に力を入れている図書館とのことで、7類のみ1階に配架されている。訪問時、ミルクに関する展示があったが、那須塩原市では酪農が盛んであることが展示理由の一つで、地域に関連した取り組みがなされている。カフェでもミルクの製品が多くあった。
公共図書館は、図書館として独立した環境になってしまうことがある。しかし那須塩原市立図書館みるるにおいては、地域にかかわる展示やイベントを積極的に取り込み、それらを宣伝し、地域住民はもちろんのこと、私たちのような観光客へのハブとしての機能が働くことにより、開放的な空間になっていると考えられる。
●児童書コーナー

絵本のいずみというコーナー(写真左)では、本が溢れ出るような空間を意識していたり、お話しのトンネル(写真下)というコーナーでは、子どもが入りやすいような工夫と共に子どもの興味を存分にキャッチした本を配架していた。メルヘンの会というボランティアさんが制作した布絵本がある。旧館時の布絵本制作講座から誕生し、こども祭りなども手伝ってくれるそうである。
兼任も含めて職員は9人、そのうち専任は1人、子育て関連の業務との兼任が2人とのことであった。週2~3ある社会科見学や職場体験の対応など基本的に多忙であるそうだ。4ヶ月検診も担当し、わらべうたや保護者への図書館案内も行っている。

おすすめ本選書基準については、東京子ども図書館の目録を参考に、小さい子は親と一緒に読むイメージを想起しながら行っている。特に絵本に関してはロングセラー、昔話にも力を入れつつ、新刊は丁寧に美しい言葉で作られているものを基準にしている。複本も多いが、みんなに読んでほしいという気持ちで選定している。読み聞かせイベント(毎週土曜午前)では、広いスペースがあり、こどもが5~10人くらい+保護者で行っていたり、2、3年前からはレファレンスイベント(2回連続講座)を行っていたりと力を入れている様子であった。特にレファレンスイベントは面白く、第一回目の講座では、分類→〇〇の本はどこにある?→「298ト」までを書かせる作業を行い、第二回目の講座では、百科事典の目次・索引→パスファインダーを使ってみる(14種類ある、毎年増やしている)内容となっている。児童に対するサービスでは、その年齢で終わらせずその先を見据えた運営が行われていた。
さいごに
お一人の図書館職員の方に、「今どういう存在でありたい? これからどこを目指していきたいのか?」という質問をさせていただいた際に「若い世代に気軽に来てもらえる図書館」という内容の回答であった。その通りのように、本を貸出できる場所としてではなく、休憩所として交流の場として学びの場として、利用者によって様々な環境へと変化することのできる図書館であった。視覚的に開放的な空間であるということも理由の一つとして考えられるが、図書館からは人が過ごしやすく、生活に欠かせないような場所として作ろうとする意識を感じることができた。利用者のニーズに応えながら、地域と共存していく図書館が今度の公共図書館の在り方の一部として求められていくだろう。

