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中学・高校の読書 『読書と豊かな人間性』指導への期待(前半)

明治大学付属明治高等学校中学校の司書教諭の江竜珠緒です。本稿は、2026年3月15日(日)に立教大学で開催されたシンポジウム「「読書と豊かな人間性」の授業内容と指導法の検討」での報告記録です。

 今回、わたしは、このテキストで中学と高校の実践の章を担当させていただきました。実はわたしの章は全体の中でおそらくかなり最初のほうに書きあがった章でした。他の章を知らないまま書いたものなので、整合性があるんだろうかとやや不安に思っておりましたが、完成したテキストを見て、日々やってきたことと先生方が学生さんたちに教えようとしていらっしゃることとの齟齬はあまりなかったな、よかったと胸をなでおろしたものでした。しかし、これまで「学習指導と学校図書館」は教えたことがあるのですが、「読書と豊かな人間性」を教えたことはなく、現場の実践を書くということで、よく読み直すと「予算が……」とか、妙に現実的な言い訳をしている部分もあるなと反省したりもしていたところです。

 ともあれ今日は、自分が担当したテキスト部分の補足と、「読書と豊かな人間性」指導への期待、というこのシンポジウムのテーマに沿ったお話をしていきます。スライドには、ときどき話している内容とは無関係に、日頃の実践でテキストには掲載できなかった写真を載せています。ご覧いただければ幸いです。

 テキストの中でも書きましたが、中学、高校はとにかく小学校と違って授業スタイルが大きく変わり、まだまだ子ども気分が抜けないのに、一足飛びに大人扱いされてしまうような……そんな時期です。家と学校とのあいだが遠くなり、部活があれば早朝から夕方まで、下手したら週末も部活があって親との距離も離れてしまう。友だちとSNSでつながるために命の次にスマホが大切になるけど、使い方を間違えるととんでもない悲劇が待ち受けている、そんな、ゆっくり安心できる時間が取りにくい日々。高校生になればそれに加えて卒業後にどうするのかというプレッシャーものしかかります。

 とにかくいろんなものがワーッとある中で、読書なんてしていられるか、という気持ちになってしまう生徒も多いでしょう。いや、大人としてはもちろん、そういうときこそ読書だよ、このテキストそのもののタイトルでもある「豊かな人間性」、テキストの中で書かれていたように、言語、認知、人間性、社会性……そのために読書が必要だよって、声を大にして言いたいところではありますが、なかなか難しい、というのが現実です。

 年齢が上がるにつれて読書をしなくなる生徒が増えてきていて、いやもうどうしたらいいんだろう、と。「探究」「学習」のための読書、つまりあちこちを拾い読みすることはできても、じっくり1冊は読めない。そういう生徒も増えている。とにもかくにもそういう状況の中で、生徒に本を読ませるにはどうしたらいいのか、というのが学校図書館で働く者として大きな課題になっているのが現状です。

 馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできないということわざがありまして、どうやって水を飲ませるのか、つまり生徒に本を読ませるのか、というのが実践の部分で、司書教諭の日々はどうやったら生徒が本を読むようになるかと悩んだり、どうしたら図書館で効果的な学習効果を得られるんだろうって試行錯誤したり、っていう、そういうのの繰り返しです。

 その実践はいろいろな方法がありまして、実際に「読書と豊かな人間性」を担当した先生方が学校図書館関係者だと、ご自分の実践をお話になられたり、ご自分が見学に行って実際に目にしたものをお話になられたりすることが多いのだと思うのです。ということで、こういうことを言ってしまうと身も蓋もありませんが、わたしが担当した章なんかはあくまでも参考、というかひとつの実践の紹介かなと。

 ただ、蔵書構築の部分は、それも参考といえば参考なのでしょうけど、とにかく水がなければどうしようもない。そしてその水は、可能であればいろんな意味で良い水であってほしい。その思いから、力をいれて書いたつもりです。

 最初に申し上げたように、中学、高校は特色の出やすい場所になりますから、その特色を踏まえて、書架に並んでいるのは生徒たちが読みたくなるような本であってほしい。そういう思いで、選書に関する部分を書きました。この科目を学ぶ学生さんたちにも、そのことを常に念頭に置いて、どんな学校の図書館に、どんな本を置くのかということを考えてみてほしいと思います。

 たとえばこれは本校の図書館で、左が3類の法律のあたり、右が6類の商業のあたりです。

 左の3類の写真にうつっているあたりは行政から始まり、地方自治、外交ときて、法律、法学、憲法、民法、商法、刑法、司法……と、ずらっと法律です。右は6類の商業ですけど、商業、広告、マーケティング、貿易、と続いていく。写っていない裏面に農業などがあるわけですが、これは実際に学校図書館をよく知っている人だと、こんなにあるのか? というくらいはあります。

 そして、なぜこんなに3類と6類があるのかといえば、わたしの勤務している学校が明治法律学校を前身とした明治大学の付属校で、法学部、商学部に進学する生徒が多いからです。高校の学校図書館は、ある程度こういう偏りが生まれていいと思っているし、実際に生まれてしまいます。本校の場合には、それが3類と6類で、さらに中高一貫なので、写真でお分かりにように、小学校高学年以上を対象とした大きくて硬い表紙の本もありますし、大人向けの本もある。

 こうやって揃えた水辺にどう生徒を連れてきて飲ませるかが、読書指導の実践になっていくのだと思います。そのあたりは、『読書と豊かな人間性』の担当の先生方に、他校の実践も含めて教えていただければと思いますし、選書+実践、という組み合わせでご指導いただければなおよいな、と思う部分です。(続く)

著者
江竜珠緒
公開日
更新日

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