北茨城市立図書館

立教大学の中村百合子です。昨日、本学司書課程の学生・教員の合計7名で、北茨城市立図書館に見学に行ってきました。三人の職員の方たちが丁寧に図書館を案内してくださり、また同館の設計を担当された岡田新一設計事務所の柳瀬寛夫社長にもいらしてくださったので、設計の経緯等をおうかがいすることができました(同設計事務所の同図書館のページ)。何でも気もちよく答えてくださり、見学から質疑応答まで、たいへん充実した約2時間を過ごしました。みなさま、見学の受け入れと丁寧なご対応をありがとうございました。

 「心を込めて大切に運営されている」ことが伝わってくる図書館だと、本学司書課程の兼任講師の先生からうかがっていましたが、その言葉のとおりだなと思いました。あたたかい図書館でした。

 平面図を見せていただいたのですが、エントランス、そして館内中央より少し奥、そしてエントランスの反対側(奥)の三か所に球体が埋め込まれています(図書館HPのスライドショーに三つとも写っています)。それぞれ、エントランスの風除室、そして児童コーナー内の授乳室とお話の部屋になっています。大きさは少しずつ違うと思いますが、平面図を見ると、図書館1階全体が、大小の円が重なるようなデザインです。

 埋め込まれた三つの球体は、シャボン玉をイメージしたものだそうです。同市に生まれた詩人の野口雨情の有名な作品「シャボン玉」から、柳瀬社長が思いつかれたということでした。また、エントランス横の階段(写真参照)には、同市のガラス工房SILICAのガラス玉を市民の方たちがアレンジして埋めた丸窓が配置されており、とても美しく、印象的でした。これも、シャボン玉のようにも見えます。

 

 本はたくさん面出しされていました。以下の写真は、新着図書、ヤングアダルト向け図書、児童書(主として小中高学年向け)の面出し展示です。

 紙芝居や大型絵本もぜいたくに並んでいました。コレクションの規模もですが、面出しするように並んでいるのが素敵でした。

 面出しの効果は本の貸し出しの統計に表れてきているそうです。書店で面出しをしてもらうのに、出版社の営業さんたちはたいへんな働きかけをすると聞きますが、図書館のスタッフは、図書館の長く蓄積されてきたコレクションの中から、利用者の方たちに手にとっていただきたいものを選んで面出しします。

 野口雨情の童謡は、同館の最寄り駅を降りるとすぐに発車のメロディで聞こえてきました。昨日は、市が経営する北茨城市歴史民俗資料館・野口雨情記念館は閉館日でしたが、野口雨情生家・資料館は開館していたので、歩いて訪ねてきました。二月にしては特別にあたたかい日だったらしいですが、海岸はきれいで、太陽の光がきもちよく降り注ぎ、これまで私は水戸やつくばといった茨城県の内陸部ばかり行っていたので、何か同県を誤解していたなと思いました。雨情のやさしい詩は、この気候で育まれた人間性から生まれたなと思いましたし、図書館と雨情生家・史料館で会った方たちのあたたかい雰囲気も、同じだと思いました。心もあたたかくなった一日でした。

 同館のサービスについては、宇梶裕子館長が以下を発表しておられます。宇梶裕子「北茨城市立図書館におけるビジュアル戦略:空間演出の工夫における試み」『図書館雑誌』Vol. 115, No. 1, 2021, 1, p. 36-38.

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著者
中村百合子
公開日
更新日

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