
フランスの児童図書館を訪ねる
(公開日 )
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立教大学の中村百合子です。私が立教大学に着任したのは2011年の4月で、その前の月に東日本大震災が起きました。当時、私は京都の大学から東京の大学に移るということで、あまりに多くのことが個人的にもあって、今、振り返っても何が起きて何を考えていたのか、よく思い出せません。ただ、立教大学が陸前高田市と震災前から交流があって、同市に積極的に支援を行いたいというような話が当時学内で頻繁に聞こえてきていたのだと思います。それで、着任直後ではありましたが、本学の卒業生で在学中からボランティア活動に熱心だった事務室の深野毅課長に相談して、司書課程としても陸前高田市に何かできないかと思っているという意志表示をしていきました。そして、翌年2月に、学生たちと一緒に、雪の降る陸前高田市生出地区で、全国から寄贈として送られてきた本の整理作業を行うことができました。この時のことは、深野課長や学生たちが、本学司書課程の紀要に書き残してくれています[注1]。
その後も毎年のように陸前高田を訪れてきました。いろいろなことが、ありました。出会いがあり、別れがありました。これからも訪れるつもりなので、貴重な出会いと別れがあると思います。少し古い思い出を書くと、悲しいこともあり、沈んでしまいそうになります。2021年に図書館実習生を受け入れていただいたことなどは感謝の気もちでいっぱいになるような、嬉しい思い出です[注2]。さすがに、10年以上が経っているので思い出を書けばきりがないですから、今回は2023年と2024年の楽しかった訪問について書くことにします。
本学の司書課程の教育・研究コーディネーターの関優花さんは、二つ(以上?)の顔をもつ方です。アーティストでもあるのです(アーティストとしての彼女のHPはこちら)。それで関さんが参加する版画のアーティストグループ版行動と本学司書課程が協力して、陸前高田市立図書館でイベントを開催することを私は思いつきました。そして、2023年12月、深野ファミリーと、関さんと私で日にちを合わせて陸前高田を訪問しました。いつものように陸前高田市立図書館に寄らせていただいたところ、「菅野」館長が会ってくださいました。菅野さんが陸前高田にはたくさんいらっしゃるようで、同市立図書館長で私が知る「菅野」館長は四人めではないかと思います! この記事ではこれから、2013年から2016年に仮設時代の図書館長でいらした菅野祥一郎元館長と、2023年に出会った菅野稔館長のお二人が登場しますのでご注意ください。
菅野稔館長に私どものアイディアを話して、図書館で、情報について、伝えることについて考えてもらうような版画イベントを本学司書課程と共催でいたしませんかと尋ねました。稔館長は検討すると引き取ってくださり、後日、舟野みさき副館長から実現できそうですとのご連絡をいただきました。
実現の裏には菅野祥一郎元館長からのお口添えもあったと推測しています。その2023年12月の訪問時は、いつものごとくとは申しませんが、またもや、祥一郎元館長のお宅で、美味しい朝食をごちそうになってしまいました。いつものとおり、おばあちゃまと泰子先生もにこやかに、祥一郎先生といっしょに、私たちを迎えてくださいました。
そうして、翌2024年8月8日(木)に、版行動の関さん、高橋沙也葉さん、千葉大二郎さんを講師にお迎えし、本学司書課程の10名の学生たちがアシスタントに入って、22名ほどのお子さんからシニアの方までの市民の方たちが参加してくださり、版画のイベントが実現しました。このイベントについては、次の司書課程紀要に学生たちに寄稿してもらう予定です。
菅野稔館長は、図書館でのイベントの前夜の8月7日(水)に、育った気仙町今泉地区のけんか七夕まつりに私たちを連れて行ってくださいました。実はこのお祭りの前には、菅野祥一郎元館長から、震災当時についてのお話を聞かせていただく機会ももつことができました。
この夜、にぎやかなお祭りを見ながら、私の中で陸前高田で見聞きしてきたことが言葉とは異なる一つの何かとしてぼんやりと浮かびあがってきていました。そして、訪れて出会ってきた方たちとのご縁の不思議さについて、大音量の中で一人静かに、考えることになりました。版画イベントのお手伝いをしながら陸前高田市立図書館の方たちと交流できたこともそうなのですが、私にとってはこのお祭りでの経験が、もう一つとても印象的でした。しみじみと、あの震災から十数年が経ったことを感じました。
[注1] 深野毅「つなぐ民」『St. Paul’s Librarian』Vol. 26, p. 63-64, 2012.3.31, https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/records/10430. ;佐藤さゆり,神彩子,戸口有莉「陸前高田「図書館支援ボランティア」参加動機」Vol. 26, p. 65, 2012.3.31, https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/records/10431(参照2025-02-05).
[注2] これについても実習に行った学生本人が書いたものがあります。藤江開生「図書館実習体験記:陸前高田市立図書館での実習を終えて」『St. Paul’s Librarian』Vol. 36, p. 60-62, 2022.03.31, https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/records/21826(参照2025-02-05).