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図書館司書養成課程に生成AIが活きる可能性を~その2

 本稿は,その1の続きです。

 今回の学会発表で採用されているポスターセッションは,発表者に割り当てられた壁1面を使って,50分間の間に自由に対話ができるというものです。そのため,「呼び込みをしないので,誰にも聞いてもらえないかも」「基本1対1の対話なので,時間の使い方に注意しないと」などの心配事がありつつも,「発表内容に興味を持っていただいた方」に絞った対話ができます。

 それでは,使ったポスターを並べます。この内容から,研究の趣旨が無事に伝わるのでしょうか・・・?(今更ですが)

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

1枚目。

 まずは,研究の趣旨を。学校図書館司書教諭養成課程のカリキュラムの改定が進んでいない現状に対して,シラバスを使って,授業設計や質の向上を図りたい。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

2枚目。

 2024年度に構築した生成AIを使った,シラバスを作るAIサービスについて。

 司書教諭課程のシラバスを196個学習させた生成AIを用いて,一般的な「会話形式」のAIサービスを構築。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

3枚目。

 Spontane.infoの一般公開が遅れていたために,立教大学で開催されたセミナーにて,ご参加の皆様に試用していただいたお話。

 満足や不満足のご意見をいただき,そこからシステム改善への道筋を掴む。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

4枚目。

 大きな問題としてとらえたのは,AIとの会話形式に起因する「十分な回答を得られない」「ざっくりとした回答になる」「何度も会話しないといけない」という回答そのものへの問題と,質の保証・根拠。

 まず,回答への問題点については,生成AI内部にて,「利用者の質問でシラバスの生成を求められた場合は,シラバスとして十分に成り立つ情報を解答の基本とする」指示を出しておく。これにより,「シラバスを作って」だけでシラバスを作れるし,そういわなければ別の会話もできる。

 次に質の保証・根拠については,生成AI内部にて,「最終的な回答をする前に,必ず,指定する法的根拠に沿っていることを確認すること。誤りがあれば,それを正してから回答すること」と指示を出しておく。今回使用した法的根拠は,生成AIは既に学習済みであった。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

5枚目。

 先の問題点「十分な回答を得られない」「ざっくりとした回答になる」を含め,「何を質問したらよいかがわからない」については,生成AIとの単なる会話形式を改め,作りたいシラバスの内容を「メニューから選ぶ」方式を新たに構築した。これにより,ボタンをぽちぽちと押すだけで目的のシラバスを作れて,さらに細かな要望も加えることができるようになった。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

6枚目。

 「作った」→「使える」に至る壁は,システムを構築する者として,非常に大きい壁だと考えています。作る側は,システムの制約を理解しているので,何ができて何ができないか,何をするにはどれだけの労力が必要か,コストに見合うか,といった内部のことを把握しています。しかし,使う側にとっては,そういった内部のことはどうでもいい事です。目的について,正確に素早くしっかりと安価に達成できることが重要です。

 ・・・ということなので,まずは何よりも「使ってもらう」ことを始めなくては,と考えています。

2025年9月日本教育工学会発表名古屋, 会場, JSET 2025 fall in nagoya

7枚目。

 最後のポスターは,本サイトの宣伝です。実は?ポスターを所定の場所に貼る作業は,ポスターセッションが始まる3時間以上前からOK!だったのです。会場の出入りは期間中自由だったので,「より多くの方に見てもらえるチャンス!」とばかり2時間半ほど早めに行って準備を終えていました。

 多くの人の目にとまればいいなー,と思っていたのですが,この場が教育工学会だからでしょうか,QRコードからのアクセスはありませんでした。。。残念です。

 以上です。

 いただいたご意見,対話したことをまとめます。今回お話できた方々のほとんどは,「シラバスと生成AI」に興味がある方々でした。(まぁその,私自身が司書教諭養成課程に精通していないのですが・・・) そのため,広い意味で「生成AIはシラバスをちゃんと作ってくれるの?」という点でのお話が主になりました。それともう一つ,「生成AIは,嘘をつく(=ハルシネーションを起こす)よね」という認識は,皆さんが理解している点でした。昨年度は「へー,嘘をつくこともあるんだ」とのご意見もあったものですから,生成AIの問題点の共有が進んだことを実感もしました。

いいと思った点

  • メニューで選んで作れるのは,分かり易い
  • 作った後に,対話形式で修正できる形は良い
  • 法的根拠に触れているのであれば,生成される内容に安心できる

気になる点

  • 図書間司書養成課程のシラバスだけしか作れないの?
  • 過去のシラバスを参考に作ってくれてるの?
  • 生成した者が「いい」「わるい」の評価はどうする?
  • 利用者は限定?
  • 費用は?

こうしたら?

  • FD(Faculty Development:大学教育の質を高める教員の活動)に関わる立場だと,大学ごとにシラバスの基本モデルがあるので,それを基準に生成してくれると確認作業が減る
  • 昨年度のシラバスを読み込ませて,それを元に生成すると実用的
  • シラバスを使って判断するのは学生なのだから,学生に評価してもらう

 それでは。

 そう遠くない近いうちに,会員の皆様にも生成AIを使ったシラバス作成サービスを体験していただくべく,準備を進めます。※会話をしている様子を「その3」でご覧ください。

著者
松本寿一
公開日
更新日

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