
学習指導要領の中で学校図書館はどのように言及されてきたか?
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立教大学の中村百合子です。
司書教諭の資格は,学校図書館法と文部科学省令である学校図書館司書教諭講習規程に定められ,学校図書館司書教諭講習を修了した者に付与されている。ここのところ,この資格付与の現状を把握しようとして複数の角度から調べている。ここできわめて基本的な部分を整理したい。
まず,文部科学省から提供を受けたデータに基づいた資格取得者数の変遷を上のようなグラフにしてみてみる。ここ数年は横ばいか,ごく微減か。なんだかんだと言って減り続けたり極端に減ったりしないのは,学校図書館法の定めによって司書教諭を置かなければならないとされている以上,文部科学省も各教育委員会も司書教諭資格取得者を確保しようとしているからだろう。
昨(2024)年12月には文部科学省から大学に「司書教諭講習相当科目を大学の教職課程において選択科目として取り入れるよう、大学に令和6年度中に協力要請を行う。」との通知が届いた(文部科学省総合教育政策局地域学習推進課「司書教諭・社会教育人材の養成について」)。また,同省は「教師の採用等の改善に係る取組事例」を毎年のように公開しているが,隔年の報告の「3 特別の選考」を見ると,「司書教諭任用資格の所持による特別選考」のされている都道府県と市がわかる。2022(令和4)年度に実施した公立学校教員採用選考試験では,全国68の教育委員会のうち,小学校教諭については34,中学校教諭については35,高等学校教諭については28,特別支援学校教諭についても28が「加点」もしくは「考慮」したと回答した(「令和5年度教師の採用等の改善に係る取組事例」)。
次に示したグラフは,夏の司書教諭講習を実施する大学等の機関の数である。これは文部科学省が発表してきたものを収集して作成した。この中には2012年以降は放送大学が含まれている。筆者は放送大学にも毎年,同大学からの資格申請者数を尋ね,情報開示をしてもらっている。初期は2千人を超えたことがあるが,直近の5年(2020-2024)の平均は約1,688人である。これは各年の全資格取得者数のちょうど1/3を占めている。
さらに筆者らは過去数年,全国の司書教諭資格付与のための科目の開講状況について,主としてインターネットでの情報収集を行ってきた。文部科学省は2016年度についての開講状況を整理して公開しているが,これには全国の227の四年制大学や短期大学があがっていた(「平成28年度 学校図書館司書教諭科目に相当する授業科目の開講等に係る実施予定状況一覧」)。このリストを起点にインターネットでシラバスを見つけるというアプローチで開講状況の最新状況を把握しようとした。277大学のうち29大学について,昨(2024)年の筆者らの調査では科目開講を確認できなかった。複数の短期大学の閉校があったのと,科目名を変更して開講しているらしくてにわかに学外者がわからないようになっている例があるようだった。その一方で,新たに島根県立大学をリストに加えた。2024年度については,198の大学で司書教諭資格付与の科目のシラバスの存在を確認できた,というところで,完璧ではないと認識しながらも,調査を終えた。
続けて,同じ年に夏の講習を実施する32機関の科目担当者を整理した。それをその198大学の科目担当者と一緒にしてみて,オリジナルなお名前として489名を把握した。本Spontane.infoで交流させていただきたいのは主としてこの方たちである。教員免許状や司書資格付与科目を教える方たちにももちろん加わっていただきたいと思っている。こうした統計による把握は司書教諭の資格付与と養成の実態把握のごくごく入口なので,別の角度からも今後,報告していきたい。