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東京大学総合図書館・巣鴨北中学校見学記

 立教大学の中村です。私が2025年秋学期に担当している「図書館UX論」の授業の受講生、曲灵韵(きょく・りんゆん)さんからの報告です。前回、曲さんの板橋区立中央図書館の見学記を公開しています。よろしければそちらもぜひご覧ください。


東京大学総合図書館 

立教大学文学研究科教育学専攻博士前期課程に所属する曲灵韵(きょく・りんゆん)です。図書館UX論で同級生たちと見学に訪れた東京大学総合図書館には、「図書館」というよりも、むしろ「建築」としての印象をより強く感じました。改修を経ているものの、高い天井や館内の装飾の配置などには、歴史的な趣がよく残されており、その雰囲気を現在に伝えています。

 図書館として最も印象に残ったのは、1階に設置されていたカード式目録です。実際に目にし、さらには手を動かして使用できたことに深く感動しました。現在は更新が止まっているものの、案内してくださった司書さんによると、今でも利用しているとのことで、不思議な感覚を覚えました。まるで時を超えて過去とつながったような、そんな体験でした。

 整然と並ぶカード目録は非常に端正な印象を与える一方で、当時の司書が管理する際の手間や、利用者が検索する際の煩雑さも想像できました。実物に触れ、実際にめくってみたにもかかわらず、この方法で資料を探していた時代を完全に想像するのは難しく、図書館が技術の進歩によっていかに大きく変化してきたのかを改めて実感しました。

 別館ライブラリープラザは、噴水の下に位置し、さらに天窓が設けられているという、まさに天才的な設計だと感じました。静粛に利用することを求められてはいないが、見学時には館内は驚くほど静かでした。壁面の内側をぐるりと囲むようにホワイトボードが設置されており、白い壁面という印象を保ちながらも、学習や特にグループディスカッションなどに非常に適した構造になっていると感じました。

 また、自動書庫の規模にも圧倒されました。その広大さにはただ驚くばかりでした。ただし、地下という特性上、通信環境がなく、緊急時の連絡手段が限られている点についてはやや不安も感じました。建築上の構造によるものであるとはいえ、今後はより安全性に配慮した仕組みが整備されることを期待したいと思います。

 最後に印象的だったのは、司書の方が「ここは観光地ではないと何度も言っているのですが」と少し苦笑しながら話されていたことです。建築としてあまりにも立派で魅力的であるがゆえに、管理や運営の面では少なからず影響を及ぼしているのでしょう。ハード面とサービス面の調和には時間を要し、館内でもさまざまな調整が必要とされていることがうかがえました。誇るべき優れた図書館である一方で、そのような「嬉しい悩み」も存在するのだと思いました。

 

豊島区立巣鴨北中学校

 最後に巣鴨北中学校の見学です。まず印象に残ったのは、校舎全体の広さと開放感でした。学校図書館(学習情報センター)は2〜3階にまたがって設置されており、フロア同士が自然につながるような構造で、まさに四通八達という感じがしました。空調は板橋区立中央図書館と同じく地下にあり、天井も高く、運動場に面した大きな窓から光がたっぷり入るため、空間全体が明るく落ち着いています。

 興味を引かれた点はいくつかあります。まず、図書委員の存在です。生徒がそれぞれの持ち場で作業している姿を見て、中学生の頃の記憶が少しよみがえました。友達のところへ遊びに行きつつ、なんとなく手伝ってしまう、あの感じです。図書委員という役割は、ある意味で職業教育の入り口にもなり得ます。日常的な整理や貸出業務を通して、司書という仕事の基本的な内容に触れ、図書館には専門性を持つ人が必要だという認識を早い段階から持つきっかけになります。

 次に印象的だったのは、(図書館の外ではありますが校内の)階段に面した白い壁を使ったプロジェクターの投影です。本来は装飾や掲示板に使われるはずの壁面をスクリーンに変えることで、階段が通路ではなく自然な座席になっています。この「座れる場所がそのまま広がっている」ような設計は、空間の硬さを和らげ、気持ちをほっとさせる効果がありそうです(あくまで自分の感覚で、特別な資料を調べたわけではありません)。だが実際にその場に立ってみると、非常にうまく空間を使っていると感じました。

 これほど整備された環境でも、読書活動の参加率が自然に高まるわけではないという点が非常に示唆的だと思います。読書推進にはまだ長い道のりがあるように思っています。また、文献で「学校による読書活動が逆に生徒の読書意識を下げることがある」と読んだことがあり、今回の観察との対比がとても興味深いです。施設、制度、文化、生徒の生活リズムが複雑に絡み合い、図書館のあり方が形作られます。その繊細さこそが、学校図書館を考える面白さだと改めて感じました。

 三館の見学を通して、図書館が単なる書籍の収蔵場所ではなく、利用者のニーズや目的に応じて空間やサービスを工夫していることがよく分りました。公共図書館は地域住民の多様な活動に対応し、大学図書館は学術資料や学習環境の提供に特化しています。一方で、学校図書館では生徒の日常活動や情報交換の場としての役割が強く、知識流通という伝統的な図書館機能とのバランスが課題となることも示唆されました。

 また、三館とも共通して、壁には日本十進分類法(NDC)が貼られていました。私の考えでは、利用者が必ずしもこの知識を身につける必要はなく、OPACを使えば十分に資料を検索できます。その点では、壁に新着情報やおすすめ資料を掲示する方が実用的かもしれません。

 しかし一方で、NDCを掲示することは、図書館を単なる場所としてではなく、研究対象としての学問領域として啓蒙する意味もあり、こうした科普的な(科学の普及という角度からの)価値は大きいとも言えます。施設の設計、利用者の行動、運営の仕組みが複雑に絡み合い、図書館のあり方が形成される過程を観察できたことは非常に示唆深く、今後の学びにも大きく役立つ経験となります。

著者
中村百合子
公開日
更新日

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